医療AI

松原 三郎

医療への人工知能(artificial intelligence以下AI)の導入が言われるようになって久しい。 一口にAIと言っても多岐に渡り、1)医療用画像管理システム CADe(Computer Aided Detection及びCADx (Computer Aided Diagnosis)、2)人工知能、3)機械学習、4)深層学習、5)転移学習など耳慣れない言葉がずらりと並ぶ。 コンピュータについては無知ではないと思うのだが、機械学習、深層学習、転位学習などは老骨にとって、全く知らない言葉だ。この分野の進歩には目を見張るものがある。

AIの起源は古く、17世紀のデカルトの機械論に端を発すると言われているが、実質的な進展を見たのはファジー理論など画期的な理論が生み出された20世紀終盤からであろう。医療関係でも既に、肺癌検出ソフト、不整脈診断ソフト、眼底異常所見検出ソフト、内視鏡支援大腸癌検出ソフトなど実用化直前のソフトウェアが目白押しと聞く。医師にとっては診療の正確さを増すという点で、福音であろう。画像検査の大半が診断だけであれば医師不要の時代が来るのはそう遠くない将来かもしれない。

しかしながら今後医師が不要になるかというと、そうではないようだ。国はAI診療においても医師に医療行為の最終責任を取らせる意向と聞く。機械任せで責任を取らされては堪らないので、診察行為が不要になることはないだろう。自分の経験に頼って意固地にAI情報を否定することは避けたいが、やはり丁寧な対診は捨てがたい。昔ながらの対診を軽んじる風潮が起こらない事を祈るのみである。