変形性股関節症

 股関節は,大腿骨につながる球状の骨頭とこれを覆う「おわん」のような寛骨臼(かんこつきゅう)からできており,それぞれ表面に軟骨があります.
 何らかの原因で関節のバランスが崩れると,軟骨がすり減って痛みや歩きにくさが出ます.

原因
 元々の原因として一番多いのは,寛骨臼内の体重のかかる部分である臼蓋(きゅうがい)が生まれつき浅くて小さい臼蓋形成不全で,生まれつき脱臼している先天性股関節脱臼の場合もあり,女性が大部分です.
 小さい臼蓋は骨頭を十分覆えずに体重が集中するため,表面の軟骨が次第にすり減り痛みが生じます.その他,大腿骨頭壊死・大腿骨頭辷り症・化膿性股関節炎などの病気に続いて起きることもあります.高齢化社会の現在,これら元の原因となるもののない変形性股関節症もみられます.

病期分類(前期・初期・進行期・末期)
 X線像を用いた病気の進行程度の分類が病期分類であり,骨の変形のみで軟骨がすり減っていないとされる前期から,関節の隙間が狭くなってきてる初期,さらに軟骨がすり減り関節周囲の異常な骨の出っ張り(骨棘)や骨の中の空洞(骨嚢胞)ができる進行期,骨頭と臼蓋間の軟骨がすり減って全く消失した末期までおおきく4つに分類されます.

病気の進行予防や治療
 まず,症状は疼痛とそれに伴う歩行困難のため,消炎鎮痛処置(痛み止めの処方を含む)が行われます.これは除痛には有効であり,以下に述べる日常生活改善を促す効果があります.
 同時に大切なのは,主治医の指導の下,股関節に負担のかかりにくい日常生活に変えることです.長時間立位になる作業を避けるなどの工夫,過体重ならダイエットを心がけることなどが必要です.一方,股関節の負担がかかりにくい方法での筋トレや運動療法(水中歩行や平泳ぎを除く水泳)などが,股関節周囲の筋肉の衰えを防止し病気の進行予防のために有効です.
 上記保存的な治療では疼痛がとれず日常生活に困難が生じている場合,年齢・日常生活とともに,この病期分類に応じて手術療法を考えます.
 比較的年齢が若く前期・初期の段階の場合には,自分の骨を生かして股関節の形を改善する骨切り術(臼蓋形成術,寛骨臼回転骨切り術,キアリ骨盤骨切り術,その他)などの中から個々の患者様に最適な術式を選択します. 進行期・末期など関節の変形が進み比較的高齢者の場合,人工股関節置換術が選ばれます.
 いずれの術式もその適応の応じて,良好な術後の成績・将来の見通しが得られているため,主治医の先生とご相談の上安心して治療を受けられることをおすすめいたします.