橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

はじめに
 骨粗鬆症になると骨折しく、よく起こる骨折として大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)、腰椎圧迫骨折(ようついあっぱくこっせつ)、上腕骨外科頚骨折(じょうわんこつげかけいこっせつ)があります。手首の骨折のなかでも骨粗鬆症によって起こるのが「橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)」です。

「橈骨遠位端骨折」とは
 肘から手首までの腕を前腕(ぜんわん)といい、前腕には2本の骨があります。親指側の骨を橈骨(とうこつ)、小指側の骨を尺骨(しゃっこつ)といいます(図1)。また、骨は外側の固い皮質骨と内側の柔らかい海綿骨からできています。
 若い時は橈骨の手首に近いところは皮質骨が厚く硬いのですが、年を取ると皮質骨が薄くなり、さらに海綿骨もスカスカになり折れやすくなります(図2)。

 この橈骨の手首近くの骨折を橈骨遠位端骨折といいます。転んで手をついた時によく起こる骨折です。閉経後すぐの50代後半から起こり始め60代の女性に最も多い骨折と言われています。手首に強い痛みがあり、だんだんはれてきます。
 時には、骨折したところを横から見ると骨が手の甲側に飛び出てフォークのような形になるためフォーク状変形とも言われます。指に力が入りにくく、骨折したところがグラグラすることもあります。
 診断はレントゲン検査でします。橈骨が手のひら側から甲側に斜めに折れてずれることが多く、尺骨の先が折れることもあります(図3)。

治療
 ずれた骨は引っ張ってできるだけ元通りの形にします。引っ張る時に麻酔をすることもあります。
 骨折したところが元通りになったところでギブスを巻いて4〜6週間固定します。骨折部のずれが大きい時や、元通りにしてもすぐずれる時、骨折が関節にかかっている時、骨折部の骨がバラバラになって粉砕骨折しているときなどは、手術が必要になります。
 骨の中に金属の鋼線を通したり、プレートで直接骨と骨を固定したり、皮膚の外から釘を刺して固定することもあります(図4)。

 骨折した時に手首の血管や神経が傷つくことがあったり、しばらくしてから、親指、人差し指や中指がしびれてくる手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)や外傷性変形性手関節症(がいしょうせいへんけいせいてかんせつしょう)や親指の腱(けん)が切れる長母指伸筋腱断裂(ちょうぼししんきんけんだんれつ)が合併症として起こることがあります。

リハビリと予防
 治療後に指が固まらないようにたえず治療直後から指を動かすことが大事です。また、ギプスを外した後や手術後には手首を反らしたり、ひねったりよく動かすことが特に大事です。
 この骨折を起こさないためには転ばないようにすることが何よりです。他の病気や睡眠薬、足の筋力低下、視力障害などで転びやすくなります。転ばないよう家の中をかたずけて、手すりをつけたり、夜、小さな灯りをつけましょう。